Web制作というビジネスについて、「Web制作は利益率が高くて羨ましいです」と言われることがあります。
はたして、これは本当なのでしょうか?
この記事では、なぜWeb制作の利益率が高いと言われるのか?実状はどうなのか?そして、Web制作会社が利益率を高めるための方法について解説します。
Web制作の利益率が高いと言われる理由
Web制作の利益率が高いと言われる理由については、下記3つの特性があるからでしょう。
- 在庫を持たなくてよい
- 原価がほとんどかからない
- 初期投資費用が低くすむ
この3つの特性については、正しい内容です。詳しく解説します。
在庫を持たなくてよい
見込生産を行う製造業などの場合は、原価や人件費をかけて製造したのにかかわらず売れなければ、損失になってしまう可能性があります。
一方で、Web制作は、発注を受けてから制作を行う「受注生産」型のビジネスであるため、在庫を抱えることはありません。
原価がほとんどかからない
製造業などの場合は、製品を生産するために原材料を仕入れる必要があります。
一方で、Web制作の場合、原材料に当てはまるものはほとんどありません。
Webサイトにイラストや写真など有料素材を使用する場合などは発生しますが、売上に対する割合はとても低いです。
初期投資費用が低くすむ
製造業などの場合は、製品を生産するために多額の投資をして設備を導入する必要があります。
一方で、Web制作の場合、PCと各種制作ソフトやツールなどが必要ですが、その費用は製造業などと比較すると限りなく低いです。
Web制作の利益率についての実感
確かに、Web制作は「売上高総利益率」という面では、「利益率が高い」と言えると思います。
しかし、Web制作は労働集約型のビジネスであるため、売上高に占める人件費の割合が大きいです。
つまり、「売上高総利益率」は高いけれど「売上高営業利益率」はそこまで高くないのでは?というのが我々の見解です。
「Web制作は労働集約型のビジネスである」とは?
労働集約型のビジネスとは、人間の労働力に頼っている業務の割合が高いビジネスのことです。
Web制作では、営業、提案、ディレクション、デザイン、コーディングなど全ての工程に人間の労働力が必要です。サービスを必要とするお客様がいたとしても、対応できる労働力がなければ、仕事を受けることができません。
また、Web制作では、お客様に対してオーダーメイドのWebサイトを提供する場合が多く、その仕様により工数が変動します。
そのため、工数を予測して、Webサイトごとに見積もりが作成されます。
デザインの度重なる修正や、仕様変更などにより、見積もり工数をオーバーしてしまうと、利益が少なくなるばかりか、赤字になる案件が発生する可能性もあります。
統計データから見るWeb制作の利益率
それでは、Web制作の利益率について統計データで確認するとどうでしょうか。
ホームページ制作業(Web制作)の業種分類とは?
まず、初めにWeb制作がどの業種分類に当てはまるのかを確認する必要があります。
総務省統計局が発行している「サービス産業動向調査事業活動一覧」という冊子に下記のように記載されています。
業種分類 | 条件 |
---|---|
ソフトウェア業 | ホームページの受注制作業(プログラム作成を含むものに限る) |
デザイン業 | インターネットホームページなどのデザインを行う事業 |
インターネット附随サービス業 | ホームページ作成業(プログラム作成を伴わないもの) |
ホームページ制作について、条件によって3つの業種分類に分かれるようです。
つまり、これの業種分類の統計データを確認すれば、利益率の参考値がわかるはずです。
Web制作以外の事業を行う企業も含まれている可能性が高いので、あくまで参考値です!
ソフトウェア業(受託開発ソフトウェア業)の利益率等の指標
日本政策金融公庫が実施している小企業の経営指標調査の結果によると、「ソフトウェア業(受託開発ソフトウェア業)」の利益率等の指標は、下記の通りです。
情報通信業(小企業の経営指標調査 2023年2月掲載)|日本政策金融公庫
売上高総利益率 74.2% 売上高営業利益率 7.4% 人件費対売上高比率 43.6% 受託開発ソフトウェア業(黒字かつ自己資本プラス企業平均)
インターネット付随サービス業の利益率等の指標
日本政策金融公庫が実施している小企業の経営指標調査の結果によると、「インターネット附随サービス業」の利益率等の指標は、下記の通りです。
情報通信業(小企業の経営指標調査 2023年2月掲載)|日本政策金融公庫
売上高総利益率 77.6% 売上高営業利益率 12.0% 人件費対売上高比率 33.8% インターネット附随サービス業(黒字かつ自己資本プラス企業平均)
デザイン業(商業デザイン業)の利益率等の指標
日本政策金融公庫が実施している小企業の経営指標調査の結果によると、「デザイン業(商業デザイン業)」の利益率等の指標は、下記の通りです。
サービス業(他に分類されないもの)(小企業の経営指標調査 2023年2月掲載)|日本政策金融公庫
売上高総利益率 75.8% 売上高営業利益率 9.0% 人件費対売上高比率 37.8% デザイン業(商業デザイン業)(黒字かつ自己資本プラス企業平均)
Web制作会社が利益率を高めるには?
それでは、Web制作会社が利益率を高めていくためには何をすれば良いでしょうか?
Web制作会社が利益率を高めるためには、下記3つに取り組む必要があります。
- 業務効率化を図りコストを削減する
- 付加価値を高めて単価を上げる
- ストック型のビジネスを行う
それぞれについて詳しく解説します!
業務効率化を図りコストを削減する
Web制作は労働集約型のビジネスであるため、業務効率化を図り、工数を少なくすることができれば利益を大きく残すことができるようになります。
業務効率化を図るための一つの手段として、業務効率化ツールの導入があります。
我々、株式会社フォノグラムでは、自社の業務効率化のために下記のツールを開発し、現在では、多くの制作会社様にご利用いただいています。
- 修正依頼ツール「AUN」(ふせん紙の間隔でサイトや画像にメモを貼って共有できるツール)
- 依頼管理ツール「トコトン」(同時多発的に進む小規模プロジェクトの管理に特化した依頼管理ツール)
付加価値を高めて制作単価を上げる
利益とは、大雑把に言うと「売上-経費」です。経費を変えることができない場合、利益を高めるためには、売上を増やす必要があります。
さらに、売上を増やすためには、客数を増やすか制作単価を増やす必要があります。
制作単価を上げるとは、例えば100万円で提供していたウェブ制作を200万円で提供するようにするなどです。
このように制作単価を上げるためには、付加価値を高める必要があります。
たとえば、BtoB企業特化、製造業特化、士業特化、採用サイト特化などのポジショニングを取り、それらについての専門的な知識やノウハウ、実績を蓄積し、提供するなどを行うことで、強い独自性を作り、価値を提供することができるようになります。
言い換えると、お客様にとって「このWeb制作会社以外は考えられない!」という状態を目指すことで、制作単価を高めることができます。
ストック型のビジネスを行う
ストック型ビジネスとは、定額または従量課金のサービスを提供して継続的に収益を上げるビジネスモデルのことです。
サブスクリプションビジネスとも呼ばれます。
弊社では、下記のようなストック型ビジネスを展開しています。
- 修正依頼ツール「AUN」(ふせん紙の感覚でサイトや画像にメモを貼って共有できるツール)
- 依頼管理ツール「トコトン」(同時多発的に進む小規模プロジェクトの管理に特化した依頼管理ツール)
- Webサイト保守管理サービス
まとめ
Web制作は、利益率が高いと思われがちですが、労働集約型のビジネスであるため、売上に対する人件費の割合が大きいため、売上高営業利益率はそこまで高くありません。
Web制作会社が利益率を高めるためには、「業務効率化を図りコストを削減する」「付加価値を高めて単価を上げる「ストック型のビジネスを行う」といった取り組みが必要です。
トコトンブログにはWeb制作会社の収益化ノウハウの記事が他にも複数あります!ぜひこれらも参考にしてください!