「あのページのテキスト、いい感じに変えといて」
「先日お話しした件、反映お願いします」
「料金のところ、ちょっと直してほしいんだけど」
Web保守の現場では、日々こんな依頼が飛び交っています。人間同士なら「はいはい、あの件ね」と察して動けるものです。
でも、この依頼をそのままAIにお願いして、AIはピンと来てくれるでしょうか?
もちろん答えは「No」です。
でも、これはAIの能力が低いからではありません。あなたとクライアントの間にある「過去の蓄積」を、AIが持っていないからです。
人間のWeb担当者なら、過去のやり取り、打ち合わせの記憶、「あのクライアントが『料金』と言ったらだいたいプランページのことだ」という経験則——こうした 蓄積された文脈があるから、曖昧な依頼でも動けます。AIには、この蓄積がゼロの状態でいきなり依頼が届くのです。
前回の記事では、WordPressからAstroへの移行で「AIがサイトを直接書き換えられる土台」を作った話をしましたが、その作業を一緒に進めてくれたのが、Claude CodeというAIツールです。Web制作の業界では今人気が高まっています。
土台を整え、AIツールも用意しました。でも実際に使ってみて気づいたのは、「AIにも文脈の蓄積が必要だ」ということでした。
今回は、Claude Codeを使って曖昧な依頼を「正確な指示」に変換しながら、AIを”このプロジェクトを分かっているアシスタント”に育てていく実践的なテクニックを紹介します。

Claude Codeとは?

Claude Codeは、Anthropic社が提供するAIコーディングアシスタントです。普通のチャットAIとの大きな違いは、パソコン上のファイルを直接読み書きできることです。
普通のAIチャット(ChatGPTやGeminiなど)は、こちらが文章をコピペして貼り付けなければ中身を見られません。一方、Claude Codeはプロジェクトのフォルダの中を自分で見に行って、ファイルを開いて、編集して、保存するところまでやってくれます。
Claude Codeを例に紹介していますが、ファイルを自分で見に行って変更できるのは、Claude Codeだけの機能ではありません。CursorやAntigravityのようなAI搭載エディタや、コマンドラインで動作する他のAIツールでも同様のことが可能です。

今回はClaude Codeを例に紹介しますが、考え方自体は他のツールにも共通して当てはまります!
前回の記事で紹介した「Astroで作ったサイト」は、コンテンツがテキストファイル(Markdown)で管理されています。つまりClaude Codeにとっては、サイトのテキストを直接開いて書き換えるだけでWebサイトの更新ができる仕組みです。
ただし、ファイルを触れるからこそ、指示が曖昧だと意図しない変更をしてしまうリスクも高いのです。
クライアントからの依頼をそのまま渡してもうまくいかない理由
入社したばかりの頃を思い出してみましょう。クライアントから「いつものページ修正なんですが~」と依頼を受けても、何のことか分からなかったはずです。サイトの構成を把握し、過去の修正履歴を知り、クライアントの口ぐせを覚えて…何か月、何年もかけて「察する力」を身につけてきたのではないでしょうか。
優秀なAIも、最初はその「初日」の状態からスタートします。ただし人間と違うのは、正しくやれば驚くほど速く「ベテラン」に育つという点です。それについては後ほど詳しくお話しします。
まずは「初日」のAIにクライアントの依頼をそのまま渡すとどうなるか、見てみましょう。
- 「料金のところ」が、料金のページなのかトップの料金表記なのか判断できない
- 「直す」が金額の変更なのか表現の修正なのか分からない
- 良かれと思って、頼んでいない箇所まで一緒に修正してしまう
前回のたとえ話を借りれば、Astroで作った「お弁当屋さん」の厨房はバッチリ整っている。でも、今日入ったばかりのアルバイトに「いつものやつ」とだけ伝えても、作れるわけがありません。


この状態でAIに頼んで、AI使ってもイマイチだったなあ…と思ってやめてしまうのは、とてももったいないことです。
AIをベテランに育てるにはどうすればよいか
方法は2つあります。「毎回、丁寧に指示を出す」か、「AIに経験を積ませる」かです。
丁寧に指示を出す
まずは「丁寧に指示を出す」側から見てみましょう。
実は、Claude Codeには優秀な特性があります。情報が足りないとき、自分から聞き返してくれるのです。
イメージを見てみましょう。

料金のところ、直しといて
確認させてください。
- 対象は /service/(料金)ページでしょうか? トップページにも料金の記載がありますが、どちらですか?
- 『直す』とは具体的にどのような変更でしょうか?(金額の変更、表現の修正、レイアウトの調整など)
- 修正後のテキストがあれば教えてください。
優秀な人間の部下と同じように、「分からないことは確認してから動く」という振る舞いをしてくれます。
これは、Claude Codeが勝手に推測して作業を進めてしまうリスクを大幅に減らしてくれる、非常にありがたい特性です。
一方、必要な情報が揃っている指示を出すと、Claude Codeの動きはまったく違います。

/service/ページの料金表記を『月額9,800円〜』から『月額12,800円〜』に変更してください
(該当ファイルを開き、テキストを検索し、該当箇所を書き換える)
/service/ページの料金表記を変更しました。変更箇所は以下のとおりです:
- 修正前:月額9,800円〜
- 修正後:月額12,800円〜
確認をお願いします。
一度の指示で作業完了です。指示が明確であれば、Claude Codeはファイルを自分で探して、該当箇所を見つけて、書き換えて、結果を報告してくれます。
どちらの方法でも作業は完了します。しかし、この2つの例を見比べると、指示の質がAIの生産性を決定的に左右することがよく分かります。
実はお金の話でもある——「トークン」とコスト
もう一つ、見落とされがちですが重要なポイントがあります。
AIとのやり取りには、使った分だけ料金がかかるということです。
Claude CodeのようなAIサービスは、「トークン」という単位で利用量を計算しています。ざっくり言えば、AIが読み書きする文字の量に応じて課金される仕組みです。
ここで先ほどの2つの例を思い出してください。
- 曖昧な指示 → AIが聞き返す → 人間が答える → AIが再度確認する → ようやく作業開始……と 何往復もやり取りが発生
- 明確な指示 → AIが即座に作業完了 → 1往復で終了
やり取りが増えるほどトークンを消費し、コストが膨らみます。つまり、曖昧な指示は「時間」だけでなく「お金」も余計にかかるのです。
逆に言えば、指示の質を上げれば、同じ作業をより速く、より安価に完了できます。これは、AIを日常的に使うほど効いてくる差です。

明確な指示のコツはこちらの記事で紹介しています。この記事で紹介している修正指示ツールを使うことでクライアント側の指示を明確にするための仕組みにもなります。
AIに経験を積ませる
もうひとつは、人間と同じようにAIにも経験を積ませることです。
AIに、人間が何年もかけて積み上げてきた「文脈」を、いかに効率よく渡すかが重要になります。
日々の業務の中で効率よくAIを育てていく方法を、3つのステップに分けて紹介します。
- まずはAIに聞き返させて、「何が足りないか」を一緒に把握する
- 曖昧な依頼をAIに整理させて、作業効率を上げる
- やり取りの蓄積をAIに学習させて、だんだん「察せる」ようにする
①→②→③と進むにつれて、AIが自力でカバーできる範囲が広がり、人間の手間とコストが減っていきます。

では、ひとつずつ見ていきましょう。
ステップ①:Claude Codeの「聞き返し」を活かす
Claude Codeが聞き返してくれることを積極的に活用しましょう。
クライアントからの曖昧な依頼をそのままClaude Codeに投げてみてください。すると、Claude Codeが「何が足りないのか」を整理して聞き返してくれます。

クライアントから『サービス紹介のページ、もうちょっとわかりやすくして』と言われました。対応してください。
対応する前に、いくつか確認させてください。
- 『サービス紹介のページ』は /service/ ページのことでしょうか?
- 『わかりやすく』とは、具体的にどのような改善をイメージしていますか?
- テキストの表現をやさしくする
- 情報の並び順を整理する
- 足りない情報を追加する
- 現在のページを確認して改善案を提案する形でよろしいですか?
確認をお願いします。
ここでのポイントは、自分がゼロから「何を確認すべきか」を考える必要がないということです。
Claude Codeが不足情報のリストを自動で作ってくれるので、Web担当者はそのリストをもとにクライアントへ確認を取ればOKです。「何を聞けばいいか分からない」という状態から解放されます。
ステップ②:曖昧なメールをClaude Codeに「翻訳」させる
二つ目は、受け取った曖昧な依頼をClaude Codeに整理してもらう方法です。
たとえば、クライアントからこんなメールが来たとします。
お疲れ様です!
この前の打ち合わせで話した件ですが、サービス紹介のページに載ってる「月額9,800円〜」の表記を、来月から価格改定するので「月額12,800円〜」に変えてもらえますか?
あと、「お問い合わせはこちら」のボタンの色、もうちょっと目立つ感じにしてもらえると嬉しいです。
できれば今週中にお願いします!
このメールをそのままClaude Codeに貼り付けて、「この依頼を修正指示として整理して」と頼みます。

(メール本文貼り付け)
この依頼を修正指示として整理して
メールの内容を整理しました。2件の修正依頼が含まれています。
修正①(対応可能)
- 対象:サービス紹介ページ(/service/)の料金表記
- 修正前:「月額9,800円〜」
- 修正後:「月額12,800円〜」
- 期限:今週中
→ このまま作業に入れます。実行しますか?
修正②(要確認)
- 対象:サービス紹介ページ(/service/)のお問い合わせボタン
- 依頼内容:ボタンの色を目立つように変更
- 不足情報:具体的な色の指定がありません
→ クライアントに希望の色を確認するか、こちらで候補を提案しましょうか?
注目してほしいのは、Claude Codeが 「すぐ作業できるもの」と「確認が必要なもの」を自動で仕分けしている点です。
さらに、修正①についてはその場で「実行しますか?」と聞いてくれています。整理から実作業まで一気通貫で進められるのが、ファイルを直接触れるClaude Codeならではの強みです。
普通のチャットAIなら、整理した結果を見て、自分でファイルを開いて、手作業で書き換える必要がありますが、Claude Codeなら「はい、お願い」の一言で修正が完了します。
ステップ③:過去のやり取りを「学習」させる
ここまでは「曖昧な指示が来てしまった後」の対処法でした。でも、もっと根本的なアプローチがあります。
AIに過去のやり取りを学習させて、曖昧な指示でも正しく動けるようにしていくのです。
AIは「一度教えたこと」を覚えられる
Claude Codeには「メモリ」という仕組みがあります。過去のやり取りで学んだことを記録しておき、次回以降の作業に活かせる機能です。
たとえば、初めて「料金のところを直して」と言われたとき、Claude Codeはステップ①のとおり聞き返します。そこで「ああ、/service/ ページのことです」と答えたとすると、このやり取りをメモリに記録しておけば、次からはこうなります。

メモリに記録するには「メモリに記録して」とお願いすれば大丈夫です。

料金のところ、前のに戻して
前回と同じく /service/ ページの料金表記ですね。前回「月額9,800円〜」から「月額12,800円〜」に変更しましたので、元の 「月額9,800円〜」 に戻しました。確認をお願いします。
人間の部下が仕事を覚えていくのと同じ感覚で、1回目は聞き返すけれど、2回目からは察してくれるようになります。
過去のやり取りを「引き継ぎ資料」として一気に読ませる
「でも、1回ずつ覚えさせていたら何か月もかかるのでは?」と思うのではないでしょうか。
実は、最初にまとめて学習させる方法もあります。
やり方はシンプルです。過去のクライアントとのメールや修正履歴を、プロジェクトのフォルダにまとめて入れておいて、Claude Codeに「このフォルダの中身を読んで、よくあるパターンを整理して」と頼むのです。

docs/past-requests/ に過去半年分のクライアントからの修正依頼メールを入れました。読んで、よくあるパターンを整理してください
(フォルダ内のファイルを順に読み込み、分析)
過去の依頼を分析しました。以下のパターンが見つかりました:
- Aさんが『トップ』と言うときは /function/(機能紹介)ページを指しています(8件中7件)
- 料金変更の依頼は年2回(4月・10月)のペースで発生しています
- 画像差し替えの依頼には元画像が添付されていないケースが多く、毎回確認が必要です
- お知らせの追加は月2〜3件ペースで、カテゴリはメンテナンスが最多です
これらをプロジェクトの設定に記録しておきましょうか?

記録しておいてください
これは「初日のバイト」に、引き継ぎノートを一気に読んでもらうようなものです。ゼロから少しずつ覚えさせるのを待つ必要はありません。過去の蓄積があるなら、それを活用しない手はないのです。
「このサイトの取扱説明書」を育てていく
Claude CodeにはCLAUDE.mdというファイルの仕組みもあります。これは、プロジェクトの情報をまとめたファイルで、Claude Codeが作業を始めるたびに自動的に読み込みます。
いわばこのサイトの取扱説明書です。
最初は空っぽでも構いません。日々の作業を通じて、少しずつ情報を書き足していけばいいのです。
- 料金ページは/service/にある
- お知らせの追加はastro-site/src/content/news/ にMarkdownファイルを作る
- クライアントAさんが『トップ』と言ったら、たいてい /function/ ページのこと
- 画像の差し替えは inc/images/ 配下に配置する
こうした情報が蓄積されるほど、Claude Codeは多少曖昧な指示でも文脈を補完して正しく動けるようになります。
使えば使うほどトークンも節約できる
ここでトークン(コスト)の話を思い出してください。
過去のやり取りが蓄積されていない状態では、毎回「どのページですか?」「どのファイルですか?」とAIが聞き返す必要があり、そのたびにトークンを消費します。
しかし、メモリやCLAUDE.mdにプロジェクトの知識が溜まっていけば、聞き返しの回数が減り、1回のやり取りで作業が完了する確率が上がります。使い込むほど速くなり、安くなります。
実際に私たちのサイトでは、修正依頼のURLを渡すだけで、Claude Codeが 対象ファイルの特定→修正→プレビュー確認→反映 まで一連の作業を自動で進めてくれるところまで育っています。ここに至るまで、特別な設定を一気にやったわけではありません。日々の作業の中で少しずつ「学習」が積み重なった結果です。
まとめ:AIを動かす鍵は「指示の質」と「学習の蓄積」にある
AIを動かす際、クライアントからの曖昧な指示をそのまま流すとうまくいかない場合が多いです。
うまく動かすには、2つのアプローチがあります。1つは曖昧な指示を丁寧な指示に置き換え、指示の質を上げること。もうひとつは人を育てるように、学習を蓄積していくことです。
学習の蓄積には3つのステップがあります。
| ステップ | やること | 効果 | トークン節約 |
|---|---|---|---|
| ① 聞き返しを活かす | 曖昧な依頼をそのままClaude Codeに渡す | 不足情報をAIが自動でリストアップ | △ 聞き返し分は消費するが、誤作業のやり直しを防げる |
| ② 翻訳させる | メール等の依頼をClaude Codeに構造化させる | 整理→確認→実作業を一気通貫で | ○ 整理と作業を1セッションで完結 |
| ③ 学習させる | 過去のやり取りやプロジェクト情報を蓄積 | 使うほどAIが賢くなり、曖昧な指示にも対応可能に | ◎ 聞き返し不要で最小限のやり取り |
この3つは段階的に進められるのがポイントです。
最初はステップ①から。曖昧な依頼が来たら、とりあえずClaude Codeに投げてみる。AIが聞き返してくれるので、その答えをやり取りするだけです。
慣れてきたらステップ②で、メールやチャットの依頼をまとめてAIに整理させてみる。一度に複数の依頼を構造化できるので、効率が一気に上がります。
そして日々の作業を通じてステップ③が自然と進んでいく。過去のやり取りが蓄積されるほど、AIは「このプロジェクトのことを分かっている」アシスタントに育っていきます。
過去のやり取りがまとまっていれば、最初にまとめて学習させ、ステップ①~③を一気に進めることもできます。
「AIフレンドリーなサイト(Astro)」を作ることは、AIが作業しやすい環境を整えるものでした。今回の話は、AIが正しく動ける指示と知識を整えるものです。
環境 × 指示 × 学習 ——この3つが揃ったとき、AIは本当の力を発揮します。
トコトンで「過去の依頼」をAIの学習データにする
「AIに学習させる」アプローチで重要になるのが、過去の依頼がデータとしてきちんと残っていることです。
メールやチャットに散らばった依頼は、振り返ろうとしても探し出すのが大変です。でも、依頼管理ツール 「トコトン」で一元管理されていれば、過去の修正依頼が検索しやすいデータとしてすべて残っています。

さらにAI連携しやすくなる新機能(MCP)もリリース準備中です!別の記事で詳しく紹介したいと思います。
「このクライアントは過去にどんな依頼を出してきたか」「このページはどんな修正が多いか」
こうしたパターンが蓄積されていれば、AIはそこから学んで、より的確に動けるようになります。

「トコトン」は、小規模案件に特化したプロジェクト管理ツールで、日々の細かい更新依頼の情報を一元化することができます。
下記のように、Webサイトの保守・管理・運用に特化した様々な機能を搭載しています。
- クライアント情報/契約内容登録機能
- プラン/サービス登録機能
- ステータス管理機能
- タスク割り当て機能
- カレンダー型公開日管理機能
- ポイント機能
- メール連携機能(メールで案件作成・コメント追加)
トコトンで実現できること
トコトンで修正依頼をテキスト情報として一元管理すれば、AIを間に入れた保守業務の自動化にもつながります。
- 複数の連絡手段を一元化 – メール、電話、チャットの情報をすべて一箇所で管理
- 進捗状況の見える化 – 案件の現在のステータスが一目で分かる
- タスクの優先度管理 – 緊急度と重要度を自動的に整理
- チーム内情報共有 – 担当者が不在でもスムーズな引き継ぎが可能
- クライアント対応の効率化 – 定型的な対応フローで時間短縮
AIの時代、依頼データを整理して残しておくことは、単なる管理の効率化ではなく「AIへの投資」でもあります。まずはトコトンで依頼の一元管理を始めてみませんか?
無料デモ体験の申し込みも受け付け中です。
詳しいサービス内容については、依頼管理ツール「トコトン」サービスサイトからご確認ください。


